昨日Netflixで配信が始まった樋口真嗣監督の「新幹線大爆破」。
1975年の同名オリジナル映画(高倉健主演)では、80㎞/hを下回ると爆破する設定だったが、そのリメイク。
今回は100㎞/hである。
早速観てみた。
これは秀作。
星3つ半。★★★1/2
観る価値ありだ。
面白い。
キアヌ・リーブスの「スピード」の元ネタとなった1975年の「新幹線大爆破」だが、あちらよりも格段にこのリメイクの方が面白い。
高倉健が主演した1975年のオリジナル映画は、バカすぎる警察(柔道部!)と、途中に起こるトンデモ展開(火事ね)のせいで一気にバカバカしくなり真面目には観てられないバカ映画になりさがったものだったが、今回のはトンデモ展開になりそうなところでギリギリならずに耐えるという綱渡り脚本を二度三度と繰り返した挙げ句、最後まで土俵際で粘りきり耐えるという素晴らしい戦いだった。
そういう意味で、ブラボーである。
よくもまぁ、あのギリギリのところで筆がスベらず、演出がスベらず、耐えた!
感動した!
そういう感じの映画だった。
以下ネタバレ。
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何とこれ1975年の映画の続編である。
前回の犯人と警察の怨恨の線が犯行の動機となっている。
それ自体、大したアイデアではないが、意表を突かれた感じはある。
まず、昔の「新幹線大爆破」では、冒頭から国鉄&警察側と犯人側をカットバックで描いていたのだが、今回の映画は前半は犯人側をほとんど描かずに進み、ひたすら新幹線内とJR東日本のパニックぶりを見せていくのが本当に素晴らしい。
だから臨場感が損なわれないのだ。
犯人側を描いてしまったために臨場感が損なわれた1975年のオリジナル映画の欠点をしっかり修正してきているといえる。
群衆パニック映画の多くが陥りがちな「そんなことになるかいな」「そんな偶然あるかいな」「そんな都合良い人物が乗ってますかいな」も少し匂うのだが、先に述べたようにギリギリのリアリティラインで踏みとどまる。
例えば、爆弾の存在を知らされた乗客たちのパニックぶり。
日本国民の乗客が果たしてあんなにワーワー騒ぐものかどうか疑問なのだが、そこをギリギリの線でやりすぎずに不快になる手前で押しとどまる。
あのYouTuberみたいな乗客(要潤)が偶然乗っていて、あんな配信を始めて、それで日本中から金が集まるみたいななかなかのトンデモ展開も、あり得ないのだけれど、ギリギリ何とかやりすぎずに踏みとどまる。
犯人にしても、その犯行動機や犯行のやり口が冷静に考えるとあり得ないのだが、そんなこともフィクション作品だから今の時代あってもいいかと何だかギリギリこれでも良いような線で踏みとどまる。
つまり、何とかギリギリのリアリティを保ちつつ2時間ちょい、観させるのだ。
これはなかなかの手腕だと思う。
庵野秀明の影響をもろに受けた画作りや、テロップの出し方、演出なども、イヤな感じにならないギリギリのところで押さえているし、いやぁ今までの樋口真嗣監督作の中でいちばん良いのではないだろうか。
勿体ないのは冒頭のタイトルバックの位置。
映画冒頭がいきなりタイトルバックから始まっているのだが、そうではなく、1975年のオリジナル版と同様、物語が始まって5分ぐらい経って、犯人からJR東日本に電話が掛かってきて、斉藤工の「え?爆弾?」みたいなセリフがあって、その直後にドーンと「新幹線大爆破」のタイトルが出て、音楽と共にあの格好いいミッションインポッシブル風のタイトルバックが流れたら、今より100倍格好いい映画だったと思う。
役者でいうと、運転手役ののん(能年玲奈)がとても良い。
あと犯人役の役者も大変良いと思った。
余談だが、JR東日本の全面協力で作られたというこの映画、JR東海に怨みでもあるのだろうか。
いや、確実にあるのだろう。
JR東日本とJR東海の仲の悪さを感じる素晴らしい展開が最後の方に待ってるのもたいへん面白い(苦笑)。